2004年
新春のお慶びを申し上げます。

2003年の忘れ得ぬこと: 9/28 岳沢でキャンプし、前穗高岳に登頂。

キャンプの夜は、新月が穂高連峰に囲まれた狭い夜空から岩肌を薄明かりで照らしていた。
しかしやがて、月が稜線へ隠れ見えなくなると、辺りは闇と静寂だけの世界になってきた。
今日一日の疲れもでてきたので−5℃まで耐えるシュラフに潜り込むと、
人間という厄介なものから少しずつ離れ、
辺りに生えている小さな雑草と何らかわらなくなって行く自分を感じてきた。

いつもは頭の中だけで考えて、あれはこうだとか、これはああだとか、
もっともらしく、偉そうに、理屈ばかり言っている日々の人間社会の中を離れ、
大自然の中に、たった一人でいる自分を思うと、
心が静謐で安閑になってきた。
そのとき、心の奥底から「美しい音色を聴きたい」という思いが込上げてきた。

如何して、美しいものが必要だったのか?
何故、美しいものを追求してきたのか?
何のために、美しいものは存在したのか?

人類は太古より、食の連鎖や種の闘争に奔走し、お互いを蹂躙しながら長い時を費やしてきた。
しかし同時に、人類は地域、民族、思想を超越し、建築や彫刻、音楽や文学、演劇や舞踏などを創造してきた。
このことは、美しくあってこそ生きていくことができ、腫の存続ができたからに違いない。